お金を貸すということ│統合失調症寛解の息子の場合
「ごめん、友達にお金を貸しているんだけど○○日までに返せないって言われたから罰金が支払えない。
だからお金を立て替えてほしい。
払えないと半年刑務所に入らないといけないから…。すぐに返すからお願いします。」
2月10日(土)午前10時30分過ぎ、息子からこの内容のLINEが入った。
罰金は昨年末に息子が起こした交通事故の罰金だ。
金額は40万円。期日はその3日後だ。
息子とわたしは今も同じ家で暮らしている。
なのに、LINEでしかもこんなにぎりぎりになって…。
息子にとってもわたしにとっても40万円の罰金はすぐに用意できるものではない。
息子はお金を支払える状況にあった
しかし、息子はお金を支払える状況にあった。
息子の父親が昨年の9月に亡くなり、この1月初めに夫の財産のすべてが子供たちの手に均等に渡ったからだ。(わたしは12年前に離婚している)
そう、彼の父親からの財産分与で交通事故の罰金は支払えるはずだった。
しかし、その財産分与のお金が現在、息子の手元にない。
息子は友達に貸したというが、本当に貸したのか使ってしまったのかわからない。
息子に立て替えるお金が用意できない
「お金は用意できない。わたしにはそんなお金はない」
わたしは息子の顔を見て正直にそう伝えた。
「そんなわけないだろ。たった数十万円のお金がないなんて…。じゃあ通帳を見せて」
息子は怒りをあらわにする。
「あなたに通帳を見せる理由がない」
わたしがそう答えると息子は「それでも親か!!」と言い放った。
息子からすると思い通りにお金を出さないわたしをののしりたかったのだろう。
「じゃあ、買ってあげた財布返して」
息子はそう言った。
財産分与の後に、「父さんからの母さんへの最後のプレゼントとして買ってあげる」と息子が言うので、息子と一緒にデパートに買いに行った財布。
時間をたっぷりかけて色々見て購入したから心から嬉しくて仲間にも自慢した。
お財布を自慢したんじゃなくて優しい息子を自慢した。
お財布は購入後、誰にも見せていなかったのが救いだった。
もったいなくて暫く使えなくて写真に撮ったり飾ったりしてやっと運気のいい日におろした財布。
わたしは、財布を息子に返すことをすぐに了承した。
「わかった」
まだ、おろしたての財布をそれを包装してあった箱や紙袋と一緒に息子に渡した。
息子はそれを当たり前のように受け取り、ブランド品買取店に持って行きお金にかえた。
こんな状況の時わたしならこうする
わたしは息子にわたしならこうすると伝えたかった。
息子は安易にお金の貸し借りをして、過去に2回程わたしは辛い思いをしている。
わたしは息子のお金の問題にいちいち巻き込まれて心底辛くなった過去がある。
「わたしなら、自分の持ち物を売ったり、まずは自分の出来る事を考えるよ。」
「これを機会に働いてほしい。」
わたしはそう伝えたが息子は、
「俺は障害年金から月々2万5千円を家に入れているし、浄化槽のブロワ―が壊れた時も半分出しただろ、俺は母さんが困った時に助けてるだろ」
「FXの勉強をする、今は働く気はない」
そう答えた。
息子にとっては困った理由(原因や事の経緯)など関係ないのだろう…。
わたしは決して困っているから月々お金を入れてもらっているわけではない。
生きるって本当に大変だから、生活って本当に大変だから、親亡き後が心配だから、
わたしが生きている間に、まだ息子に向き合える元気がある時に、ひとりで生きる事の苦労を伝えているつもりなのだが。
多分、わたしが息子に伝えたいことはきっと死ぬまで伝わらないんだろうと思った。
正直何もかもが嫌になった。
「それなら、家から出て自分の力で生活して欲しい。
あなたと一緒にいるわたしが生きる気力をなくしてしまう。
わたしはコツコツ働いているが、たくさんの給与をもらっているわけではない。
だから資格を取って少しでも給与アップに繋がるように勉強をしているんだよ。」
相談支援専門員に相談をした
自分が無力だと感じた私は、息子が就労移行支援事業所でお世話になった時に相談していた相談支援専門員へこの内容の相談をした。
支援員はわたしの話を丁寧に聴いて下さった後、わたしの身体を心配してくれた。
そして今ある制度で息子が利用できるものは何もないことの再確認をした。
息子が困って相談をしてきてくれるのなら話をすることができるし、そこから広げることも可能かもしれないが、息子が自ら連絡をしてこない限り難しいと言うこと。
それはそうだと納得をした。
この一件を話せただけでも良かったとわたしは思うことにした。
息子の主治医への報告と相談
わたしは数年ぶりに息子の通院しているクリニックへ連絡をした。
息子の主治医にアドバイスをもらいたかった。
先生なら何か方法を提案してくれるかもしれないと思った。
電話をすると、受付の介護事務の若い女性が
「今日は混みあっていますが、医師がお母さんと話す時間をとれるか確認しますので30分後に再度電話をおねがいします」と言ってくれた。
30分後に電話をすると、今日の午前中の診療後の14:30頃に医師から電話をくれることを約束してくれた。
医師は(離婚した)夫が亡くなった後のわたしの心身を心配してくれたのか、
「お母さんは元気?」と息子に聞いてくれたことがあった。
その優しさにわたしは感謝していた。
実際、夫が亡くなった後「わたしにとって夫は生きていてくれるだけで心強い人だったんだ」とつくづく思った。
息子が障害者になってからは身近な相談相手としてずっと心の支えにしていたのだと思う。
亡くなる前の数ヶ月はわたしのこともわからなくなってしまった夫だけれど、それでも生きていてくれるだけで心強かった。
話を戻すが、
医師から電話があると事前に手帳に書いた順番で現状の説明をした。
医師からは「今こんな方法があるとすぐに返答はできない」と言われた。
「100万も本人に渡したんですね」と怪訝そうに言われたので、渡さないと責められることを説明した。
確かに困難事例だ。
ただ、現状を医師に説明できたことに感謝をした。
医師からは「今ある病状を悪化させないことが医者の仕事だ」と聞いたことがある。
だとすると、医師のおかげで息子は統合失調症の寛解状態が続いていることに感謝しなければいけない。
入退院を繰り返すことの大変さを回避できているのはこの医師の力が大きいとわたしは常々思っている。
息子は自分の友達からお金を借りた
支払期限の日の朝、息子は自分の友達3人からお金を借りたと話した。
40万のうち、18万は自分で用意して、11万は3人の仲間から借りた。
残りの11万は今なお準備できないと言う。
息子はこうして行き当たりばったりで生きて行くのだろうか。
息子の顔を見て、わたしは一緒に警察に相談へ行こうと話した。
警官はまずは検察庁へ連絡するようにアドバイスをくれた
わたしは息子と警察へ相談へ行った。
息子は渋々ついてきた。
本当のところ、不足分の11万はわたしに出させて、罰金を支払いたかったのだろう。
しかし、わたしはそうしたくなかった。
警官は丁寧に対応してくれ、検察庁へ連絡するように説明をした。
息子はわたしの前で検察庁に電話をして、40万円の罰金全額支払い意思があること。
そして、支払期日について明確に説明をした。
検察官は納得した様子で2週間後に支払期日を再設定してくれた。
息子は障害年金を罰金の残金にあてることにしたようだ。
まとめ│親のわたしが甘えさせるから悪い
文章を読んでいてそう思った方が多いのではないでしょうか。
しかし、わたしは今どうするすべもなく、息子はと言うと、甘えているつもりはないでしょう。
そして息子はわたしが息子を思う気持ちを理解できていないと思います。
このまま、わたしが高齢となり、心身の不調で働くことができなくなった時、どうなることかと考えます。
もちろん、息子のことです。
息子がわたしの変わりに次男を巻き込んでしまわないか不安です。